コペンでバトル

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亀山がベルデロードの下り線を愛車アルファロメオ75で走っていた時間は、可奈と正木のバトル終了から30分位経った頃である。 深夜1時まで営業しているグリーンゴッズには、可奈をはじめ常連客がバトルの報告を店長に話して盛り上がっているはずだ。 亀山は祝勝パーティーに差し入れするスィーツを買うべく、ベルデロードの枝下インターを降りて直ぐのコンビニに寄ってスィーツを買ったが、雑誌を立ち読みして集合時間に遅れてしまっていた。 正木達のシルエイティー3台に鉢合わせしたのは全くの偶然である。 3台連なる形で走っていた正木達も直ぐに気付いた。亀山のアルファロメオは今時見掛けない程に四角いボディーラインだから、一時間程前に見た姿を忘れる事は無かったようだ。 すれ違い様に亀山と正木の目が合ったが、正木は「今日はもう止めだ」とでも言う感じで直ぐに目を逸らした。 だが、後方の一台が亀山の背後に張り付いてパッシングした。場所は今まさにベルデロード最高速アタックステージの1.2キロトンネルに差し掛かろうとしていた。 「仲間の敵討ちか?若いな」 亀山は5速から2速にシフトダウンする。後付けのスタックのブースト計の針が跳ね上がり、サイド出しされたエキゾーストパイプから爆音と共にバックファイアが排出され猛然と加速した。 正木達がポンコツと言った亀山のアルファロメオの正式名称は、アルファロメオ75ターボエボリューション。アルファロメオ創立75周年に製造されたFR駆動最期のモデル75を、グループAツーリングカー選手権のホモロゲーション獲得の為に特別に製造されたモデルである。 亀山のアルファロメオは国内では数台と言われる75エボに、実戦同様グループAキットを組み込んで最新のウェーバーアルファで制御した貴重な個体であり、1987年式1.8リッター4発ターボで350馬力以上を叩き出す。 「ちょい大人げないかな」3速に入れてブーストは1.7を指し、サイドエキゾーストパイプからオレンジ色のバックファイアを横目にバックミラーを確認すると、後ろのシルエイティーは戦意喪失したのかスローダウンするところだった。構わず4速へ入れて加速する。 正木達が再び亀山のアルファロメオの姿を見る事は無かった。 コペンでバトル編……終わり
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