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名古屋近郊にある有料道路、通称ベルデロードは昔から二輪四輪問わず走り屋の隠れスポットだ。
民家が隣接する場所もあるから、保安基準から逸脱した車両や無謀なドライブをする人間は少なく、皆でこの走りのスポットを護る気風が昔からあった。
そのベルデロードの入口にある漫画喫茶グリーンゴッツに集まるクルマが、一癖も二癖もあって面白い。今、駐車場に集まってるクルマはアルピーヌA110やランチャデルタ、アルファロメオ75やクリオRS、ポルシェ968やTVRグリフィスと国籍年式バラバラだ。
店主がルノーサンクターボ2に乗っていて、欠品パーツをFRP成形したり旋盤や熔接で自作したりするうちに「俺のも造ってくれ」と言う奴が増えて、いつの間にか裏庭にリフト付きのガレージが建ってしまい、今では常連客達が持ち込んだ工具が置かれてレンタルガレージのようだ。
だから集まるクルマは最新マシンではなく旧車やアフターパーツの少ない輸入車が多いが、店主はベルデロード専用にホンダFD2(最終型シビックTypeR)フルチューンを持っていたりする。
ブーストアップ仕様のコペン乗り、水橋可奈が来店したのは陽が沈む頃だった。店に入るなり
「店長、ガレージにある14インチのSタイヤ貸して!」
と血相変えて詰め寄った。可愛い顔が台なしだ。
「貸すのは構わないけど、どうした?「マナーを知らない若造に、きっちり教育してあげるのよ!」
可奈も十分に若造の部類に入るとは思うが……可奈の話しは店長も初耳の話しだった。
ベルデロードは週末ともなると気軽なツーリングスポットとして人気だが、本気の連中は夜に集まり昼間に攻めるような走りはしない。一般車両がいる状態はお互いにデメリットしかないからだ。
しかし、可奈が出会った連中は一般車両を蹴散らすように走り、流していた可奈のコペンを煽ってきたと言う。頂上にある休憩所に避難したら連中も一緒に入って来て、
「ちんたら走るんじゃねーよ」と因縁を付けて来て、峠を走るならそれなりのスピードで走らないと周りが迷惑する。遅いクルマは道を譲れと言うのだ。
事実ならばとんでもない話しだ。クルマはシルエイティー3台。
「初めて見る連中だったから、ココでは攻める時は夜ってルールがあるって言ってやったら、じゃあ今夜バトルだって言われて……」
「公道バトルはリスクが高いし、そんな頭の悪そうな連中は放っておけば?」
「あんな連中にベルデロードを荒らされてもいいの?店長!」
確かに、一部の不心得者によって走るスポットは年々潰されている。ベルデロードは稀な例外なのだ。
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