コペンでバトル

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シルエイティーのリーダー格の男の名が正木修二と判ったのは後日だった。3台揃いのシルエイティーだからどこかのショップで買ったのではと、辺りを付けて調べたらあっさり買ったショップを見つけ出せた。二年前に開業した西春モータースと言うショップで主にセダン系中古車を扱うが、客の要望があればオークションで車種問わず引っ張ってくるし、吸排気&ポン付けROM程度なら取り付けもする。アライメントや現車合わせが必要な作業は全て他のチューニングショップへ外注に出すやり方の為、今回調べが着いた訳だ。そして、大方の予想通りの素性だった。 西春モータースの代表・西春隆士の地元の後輩が正木を含む三人で、正木達は昔は二輪で○○号線をメインに走る走り屋紛いの暴走族だったらしい。二輪は卒業して次は四輪と云う訳だ。○○号線は愛知と岐阜を結ぶ片側3車線のバイパス路で、直線が長く交差点が少ない上に信号の間隔が長いから昔からシグナルGPが盛んなスポットだ。 正木達は始めこそ大人しくしていたが、待機場所のコンビニで騒いだりシグナルGPの順番待ちを無視したり負けた相手に喧嘩を売ったりと、周囲との軋轢が目立ち出し、遂には地元の有力チームから出入り禁止を言い渡されたらしい。 地元の証言によれば、スペックが同等のクルマを探してシグナルGPをするのがルールだが、正木達は自分達から声を掛ける事は無かったと言う。自分達の場違いな雰囲気に気が引けたのかどうかは分からないが、いつも無差別級にエントリーしていたらしい。無差別級は自分の実力を試す意味合いが強いから排気量や駆動方式を問わないが、それでも格下相手では楽しめないし、順番待ちの兼ね合いで走れる本数にも限りはある。だから次第に敬遠されるようになったそうだ。 行き場を無くしてベルデロードに流れて来た訳だが、迷惑な話である。
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