ｸﾞﾘｰﾝｺﾞｯﾂ

ｺﾍﾟﾝでﾊﾞﾄﾙ

正木はｺﾍﾟﾝの発進した3秒後にｽﾀｰﾄしてﾌﾙ加速し、左ｺｰﾅｰに消えたｺﾍﾟﾝを追った。
下り坂で車速は一気に跳ね上がる。1ｺｰﾅｰをｱｳﾄ・ｲﾝ・ｱｳﾄのﾗｲﾝで抜けるようにｼﾙｴｲﾃｨｰを右に振り、ﾊﾞﾝｸを利用してややｵｰﾊﾞｰｽﾋﾟｰﾄﾞで進入したところで、ｼﾙｴｲﾃｨｰがｱﾝﾀﾞｰ気味に膨らんで咄嗟にﾌﾞﾚｰｷを掛けて焦った。
「昼に走った時と違う？！」左の1ｺｰﾅは深いﾊﾞﾝｸ角で進入自体は問題ないが、速度抑制帯がｺｰﾅｰのｱｳﾄ側に施されていて路面が冷えると僅かに滑るのだ。遠心力でｱｳﾄ側に荷重が掛かった状態だと滑る幅は大きくなり、速度域が高くなれば滑る感覚は増幅する。
正木はｼﾌﾄﾀﾞｳﾝして再び加速したが、1ｺｰﾅｰの失速が焦りを作りﾘｽﾞﾑを崩していた。ﾀﾞｳﾝﾋﾙの二つのＳ字も直線的なﾗｲﾝを取り、ｺｰﾅｰ脱出ではｱﾝﾀﾞｰが出ていてもﾌﾛﾝﾄﾀｲﾔをこじる様にしてｱｸｾﾙを開けた。
此処でも正木はﾐｽをしている。Ｓ字を直線的ﾗｲﾝで抜けるのはｾｵﾘｰだが、一つ目のＳ字と二つ目のＳ字を繋ぐ場所で同じﾘｽﾞﾑで直線ﾗｲﾝを取ると、どうしても二つ目のＳ字の進入に無理が出る。車速を保つなら一つ目Ｓ字終りは捨てて次のＳ字に備えるのが速い。買った時から着いていたﾃｲﾝ車高調のｾｯﾃｨﾝｸﾞが合っていない事と、経年劣化のﾍﾀﾘが出ていた事も要因だろう。
Ｓ字を抜ければ左回りのﾌﾞﾗｲﾝﾄﾞｺｰﾅｰ。
正木は一瞬迷ったがｼﾙｴｲﾃｨｰをｱｳﾄ側に付けた。
本当ならこのｺｰﾅｰはｲﾝﾍﾞﾀで入る方がﾜﾝﾃﾝﾎﾟ早くｱｸｾﾙを開けられて速いが、ﾌﾞﾗｲﾝﾄﾞｺｰﾅｰで加速中にもしｺﾍﾟﾝがいたら避けられず追突してしまう。
ｺﾍﾟﾝと可奈が遅いと云う先入観と油断が、結果的に可奈とのｱﾄﾞﾊﾞﾝﾃｰｼﾞを拡げる事になった。
ﾌﾞﾗｲﾝﾄﾞｺｰﾅｰを出ればすり鉢状のｽﾄﾚｰﾄ。ｺﾍﾟﾝのﾃｰﾙﾗﾝﾌﾟが見えたが、既にｽﾄﾚｰﾄ終盤に差し掛かるところだった。ｺﾍﾟﾝ目掛けて正木はｱｸｾﾙﾍﾟﾀﾞﾙを底まで踏み付けた。
正木のｼﾙｴｲﾃｨｰは他の二人とは少し仕様が異なる。吸排気はﾔﾌｵｸで落としたﾒｰｶｰ不明の中古だが、正木だけはｲﾝﾀｰｸｰﾗｰｷｯﾄとﾊﾟﾜｰＦＣを、中古量販店で買って直ぐに西春ﾓｰﾀｰｽ経由でﾁｭｰﾆﾝｸﾞｼｮｯﾌﾟにｾｯﾃｨﾝｸﾞ依頼してる。ﾌﾞｰｽﾄ1.3ｷﾛで260馬力仕様だ。