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「こんな所でその話すんな、この駄犬」
「…犬じゃないもん」
「…そこじゃねぇっつの」
コイツには学習能力がないのか。
「それは秘密、って言ったはずだろ。
誰かに聞かれてたらどうすんだ」
「う………ごめんなさい」
"アレ"。
確かに、いざって時はこれ…生まれ持った俺の特殊な力…を使えば、どうとでもなるんだろう。
だけど使いたくない。
俺がこの力を使えることを知られると、周りの奴がウザそうだし。
「行くぞ」
「あっ、待ってよー」
特殊な力ってのは、いろいろと煩わしい。
それがどんな形をしていようと、異能なわけだ。
どれだけ役に立とうと、役に立たなかろうと、人と違うということは特別な目で見られるということ。
軽蔑なのか、尊敬なのか、期待なのか、恐怖なのか。
それは知らないが…少なくとも俺は、その視線が大嫌いで。
だから、絶対に知られるわけにはいかない。
それらの視線から逃れる為にここに来たのに。
他人にまたあの目で見られるくらいなら。
「それなら、犯人になった方がましだ」
小さく呟いた言葉が、愁人に届いたどうかはわからない。
気にせずに俺は教室の扉に手をかけた。
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