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上着を脱いで鞄から教科書を取り出していると、純がわたしの肩を強く叩いてきた。
「おはよう香代。今朝のテレビとかみてなくて全然知らなかったんだけれど、昨日、またうちの生徒の家が燃えたんだってね。登校中に記者みたいな人がさ、うちに話し掛けてきて知ったんだよ。……て言うか、教室、既にお通夜のようだね」
いつもの教室とは明らかに違うことが、彼女にも奇異に映るのだろう。
わたしの前の席の田端純(たばたじゅん)は開口一番、鼻息を荒げて話し掛けてきた。
「しかも同じ学年で、八組の小西さんなんだってね? びっくりしたよ。小西さんの家族も全員焼死体で発見されたって言うし、前回の火事もうちの高校の生徒だったし、これって何か呪わているんじゃないの? うちの高校の生徒が二人も火事で命を失うって、偶然にしてはにしては気持ち悪いよね」
二つの火事に関連するのは純も指摘した、『二件共、わたしたちの通う高校』だということ。単なる偶然かも知れないし、偶然じゃないかも知れない。
「で、どうなの実際。やっぱりこれって一年生の子の家が燃えた時は火の不始末だと言っていたけれど、今回もそうなのかしら? 香代の見解はどうなのかしら?」
「二つの事件が関連しているとか、そんなのわたしには分からないよ」急に難解な設問を唯の高校生にしても、わたしは彼女を納得させるだけの解答を用意していない。
「だよねえ。うちらが推測したって無駄だよね」
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