空の死にかけた

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空の死にかけた

夏らしからぬ色をしていた 生気のないような 死にかけたような 風の運ぶ季節の匂い 草木の芽吹き育つ活力 煩わしく飛び交う虫 柔らかな土 ゆるりと流れる時 その街には何一つない ずらり並ぶ車の群れ ぐるり見下ろす高層ビル 無数の店 無数の品 硬いアスファルト 忙しい交差点 その街には何もかもある 夏らしからぬ色をしていた 呼吸の浅いような ぐったりとしたような 見上げれば涙の出てくるような 可哀想な色をしていた 空すらも失いかけた街 何一つとしてなく 何もかもがある街 私はこの土地には とても暮らせぬであろう もしもそうなったならば 気が 狂いそうだ
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