夕陽の中で 第5章

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純二 「何だよ」 なおみ 「…みんなのいる前だから…。たとえ電話でも恥ずかしいよぅ」 純二 「何言ってるんだよ。俺たちのことはみんな知ってるんだ。別にいいじゃないか」 なおみ 「でも…。あっ、何か用事があったんじゃないの?」 純二 「あっ、そうだった。帰る日が決まったんだ。26日の9時50分の新幹線に乗るから、東京に11時50分かな」 なおみ 「じゃあ迎えに行ってあげる」 純二 「ああ、頼むよ」 みんなは、なおみの言葉から、2人のやりとりを想像しながら見守っていた。 岩崎 「おい、見てみろよ。竹本と話してるなおみちゃんの顔、あんなに生き生きして」 塚本 「そうだな。あんななおみちゃんを見るのは久しぶりだな」 西田 「ますます惚れてしまいそう」 守 「…」 みんながなおみの方を見て、いろいろ言いあっているとも知らずに、なおみは純二との会話を終わらせようとしていた。 なおみ 「うん。それじゃぁ26日にね」 純二 「あっ、ちょっと待って。西田さんと代わって」 なおみ 「わかった。待っててね」 なおみは、西田に受話器を渡した。 西田 「もしもし…」 純二 「ご無沙汰してます」 西田 「どうした」 純二 「お願いがあります」 西田 「何だ。言ってみろ」 純二 「俺がいないのをいい事に、なおみにはちょっかいかけないで下さいね」 西田 「な、何言ってるんだ!そんなことしてないよ」 純二 「冗談ですよ。26日、そっちへ行きますのでよろしく」 西田 「はいはい」 純二 「それじゃ」 西田は、受話器を置きながらブツブツ言っていた。 智子 「なおみ、また竹本さんに会えるんだ。良かったね」 なおみ 「うん」 最後の挨拶も終わり、帰る準備も出来た。 なおみ 「孝行、智子を送ってあげてね」 孝行 「わかってるよ」 英雄 「なおみ、帰るぞ」 なおみ 「はーい。あっ、守君、今日は来てくれてありがとう。忙しいのにごめんね」 守 「いいよ。楽しかったし、何よりなおみに会えたんだから」 なおみ 「守君…」 守 「あっ、そうだ。これ…」 なおみ 「なあに?」 守 「さっきみんなにも渡したんだけど、俺が出る映画、正月公開なんだ。良かったら竹本さんと見に来てくれよ」
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