夕陽の中で 第5章

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敏明 「今日は飲めるんだろ」 純二 「うん。でもいいのかなぁ、昼間から」 敏明 「何か予定あるのか?」 純二 「ないけど…。こんなに早い時間から飲んだことなくて…」 敏明 「そうか。まぁいいじゃないか、たまには」 純二 「はぁ…」 敏明 「…なおみちゃんと結婚するそうだな」 純二 「誰から聞いたの?」 敏明 「久志や孝行から」 純二は照れながら話し始めた。 純二 「まだだよ。なおみだってまだ高校生だし、正式に申し込んでないし…。でも、俺たちの中ではもう…。なっ」 なおみ 「うん」 勢津子 「そう。こうして2人を見ていると、ほんとお似合いね」 純二 「そう?照れるなぁ」 勢津子 「でもかわいそうね。離れているから」 純二 「うん。会えないのは淋しいけど、でも、それが励みにもなるんだ、お互いに。1度別れて、お互いの必要性とかわかったり、お互いに傷ついたり、悲しんだり喜んだり、いろんなこと経験したから、今の俺たちは強い絆で結ばれてるんだ」 敏明 「そうか。それなら安心だ」 それからしばらくして、孝行が純二に見せたいものがあると、自分の部屋へ連れて行った。なおみは1人淋しそうに居間にいた。そんななおみを見た勢津子が、久志の部屋へ行ってみては…と、声をかけた。なおみは、何も気にせず、勢津子に言われるまま、久志の部屋へ行った。 なおみ 「久志お兄ちゃん」 久志 「よう、来てたのか」 なおみ 「うん。純二さんも一緒よ」 久志 「その肝心の純二は?」 なおみ 「孝行の部屋。居間で1人でいたら、おばさんがお兄ちゃんの部屋へ行ったらって」 久志 「…そうか。仕方ないなぁ、純二のやつも。大事ななおみちゃんを放ったらかしにして。俺が言ってやるよ」 なおみ 「いいの」 久志 「えっ?」 なおみ 「純二さん、あまりこの家の人と話せてないでしょ。今日はうちで泊まるんだし、この家にいるときくらい…と思って」 久志 「なおみちゃん…。優しいんだな。益々惚れそう」 なおみ 「えっ?」 久志の手がなおみの頬に伸びていった。 久志 「なおみちゃん…、俺…」 久志は自分でも気付かないうちに、なおみに近づいていった。 なおみ 「い、いやっ」
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