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ウチは男子を無視して三口目を味わう。
「夏草君?」
絵里香が寝癖のように跳ねた茶髪の男子…夏草君を見上げる。
そういや今呼ばれてたよね。氷雨って。
少し用件が気になってウチも夏草君を見た。
パタンとケータイを閉じるとそれが合図だったかのように夏草君が口を開く。
「あの…さ」
夏草君は息切れしている。目が焼きそばパンを見ている気がする。
「クラスのヤツから聞いたんだ。氷雨さんが購買で焼きそばパンを買ったって」
夏草君の言う通り、絵里香(とウチ)は英語が終わってすぐ、ダッシュで購買に行ってパンを買った。
絵里香は焼きそばパン、ウチはチョココロネを買った。
「…それがどうしたの?」
絵里香は不思議そうに首をかしげた。
確かに“それがどうした”だ。
絵里香が購買で何を買おうが夏草君には関係ない。
「氷雨さんが買った焼きそばパン、ラストだったよな?」
物欲しそうな目で絵里香を見る夏草君。
…そういうことか。
「あげないよ」
絵里香も感づいたみたいだ。
焼きそばパンの袋から出ていた部分を袋の中に戻し、自分の後ろ…フェンスと自分の隙間に隠した。
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