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絵里香は焼きそばパン二個と未開封のパックジュースを抱えて立ち上がった。
「焼きそばパンはアタシの命の源…これがなかったら死ぬ!!」
そう叫びながらドアへ向かって走り出す。
その様子は火事場で赤子を守る母親。何故かカッコ良く見える。
「逃がすかぁっ!!」
夏草君が絵里香の前に立ち塞がり、出口は塞がれた。
止まった絵里香に夏草君がジリジリと詰め寄る。
「っ!!」
絵里香は反対方向へと走り出す。
フェンスに囲われた屋上でドア以外に出口はないのに。
「こっち来ないで!!」
「焼きそばパンくれるなら退散する!!」
「それは無理!!」
「よこせ!!」
「絶対あげない!!」
真昼間の屋上で絵里香と夏草君の追いかけっこが始まる。
しつこい野郎だ。
そんな野郎に追い掛けられ、走り回る絵里香がクールに見えるのは見た目のせい。叫ぶのもカッコイイ。
見た目で得してる(中身はドMで変態なのに)
対してしつこい野郎、夏草君。
寝癖のように跳ねた茶髪。
太陽のような性格の彼によく似合う小麦色の肌。
ぱっちりとした茶色い目。
手足は意外と細めだったりする。
夏草君は必死の形相で女子を追いかけ回す。
見た目はカッコイイ部類(らしい)のにやってることはカッコ悪い。
……という様子を見ている間にチョココロネ完食。ウチは完璧部外者だ。
ケータイを取り出して時間を見る。
…まだまだ大丈夫、ってメール来てる。
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