11人が本棚に入れています
本棚に追加
‐屋上への階段‐
「ギリギリ間に合ったな」
夏草はいつもの笑顔を顔に張り付けながら言う。
「……」
手の中のクリームパンを見る。
購買では焼きそばパンと同じくらい人気の品。
そして秋月の今日の昼飯。
事情を知らないアイツらにとっては俺が我が儘言って秋月に昼飯貰ったことになるんだよな。
「…放課後、大丈夫だよな?」
俺はそう言ってクリームパンの袋を開けて一口かじった。口の中にカスタードクリームの甘味が広がる。
「何もねぇよ。つか元からお前と約束してただろ」
夏草は「何で?」と首をかしげる。
「俺たちで秋月にクリームパンの礼をしよう」
あいつも俺たちと同じ、“大変”みたいだからな。
「…は?」
意味が分からない、という顔をする夏草。
俺はポケットのケータイを取り出し、写メのフォルダを開いた。
「言っとくけど、お前も協力しなかったら」
夏草に例の画像を見せる。
「この画像…夏草ちゃんのスカーt「協力するからやめてくれ!!」
真っ青な顔で必死に請う夏草。
この優越感…癖になりそうだ。
「協力するから?やめてくれ?」
もっと丁寧に頼め、と目で伝え、もう一口クリームパンをかじる。
夏草は少しうろたえたがすぐに口を開いた。
「…ぜひ協力させてください、桜木桃希(さくらぎとうま)様…」
下僕は悔しそうに頭を下げた。フルネームで呼べとは言ってないが…まぁいいか。
「よろしい」
俺の言葉で下僕は頭を上げた。
「じゃあ早速―――」
作戦会議…の前に俺が知ったことを話すか。
最初のコメントを投稿しよう!