Ⅰ アリスという名の少女

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『退屈ほど辛いことはない』  これが少女――アリスの持論である。勉強は考えようには辛いと感じたことはないし、寧ろ新しい事を知ることができるというのはとても面白いと彼女は思うらしい。しかし、時として勉強は退屈だと感じることもあるようだ。  ここで、アリスのことについて皆様にお話ししよう。  金色の髪は肩ぐらいまであり、ふんわりと自然なウェーブがかかっている。目はエメラルドのように澄んだ緑色。好きなことは楽しい事を考えること。嫌いなことは退屈な事というパッと見で見たら可愛らしい人形のようにしか見えないが、つねに何かを考えているだけなのかもしれない。そんな彼女は今年で十歳になった不思議の国のプリンセスである。  不思議の国とは簡単に言えば、動物、植物、精霊、人間がお互い助け合いながら暮らしている王国である。この国では人間以外も喋ることができ、お互い意思疎通も可能だ。  そして、アリスは現在城にある彼女の部屋で日課の勉強をしていた。いや、していたのは過去の話だ。現在進行形で云うと、彼女は勉強をサボっている。そう、彼女は現在部屋の窓から空を見上げていた。 「今日もいい天気。こんな日だったら外に出掛けた方が楽しいはずなのになぁ」  大きな窓から青く澄んだ空を見ながらアリスは呟いた。空は青々としていて、大きな白い雲がそれと対比するように浮かんでいる。窓を開けると、心地よい風が部屋に吹いた。彼女は背伸びをして大きく息を吸う。新鮮な空気が肺に入る感覚は疲れていた体を癒してくれる。  しかし、癒しの時間は長くは続かなかった。風が机の上にあった紙を飛ばしはじめたのである。アリスが気付いた時には紙は全て色んな場所に飛んでいた。急いで紙をつかまえようとするが、風が邪魔してうまく取ることができない。  そんな時、ドアの開く音が聞こえた。アリスは恐る恐る振り向くと、そこには眉間に皺をよせた白うさぎ――ホワイトが立っている。どうやら、彼女の部屋に入った瞬間に全てを理解したのだろう。そのままホワイトは彼女につめよる。これは相当お怒りのようだ。
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