Ⅰ アリスという名の少女

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 白うさぎ――ホワイトはアリスの教育係兼従者である。真っ白な毛と赤くルビー色の目した愛らしい姿とは反対に性格は真面目で厳しい。でも、その厳しさはアリスの事が大切だと思っているがゆえである。  その真面目な性格は彼の服装にも表れている。彼がいつも着ている真っ白なワイシャツは第一ボタンまできっちりと留められ、首のギリギリの位置に赤いリボンを結んでいる。真っ黒なベストと赤チェックのジャケットはいつもぴっしりと整えられており身だしなみを気を付けているようだ。  彼と彼女の出会いはアリスが六歳の頃に森で迷子になっていた彼を保護したことから彼自身がアリスに仕えたいということで従者になったそうだ。  そんな彼はたとえ、大切に思っているアリスだとしても教育係としての責任があるため叱ることもある。まぁ誰であれ、いきなり部屋に入って紙が部屋中にバラバラであったら気にするはずだ。 「アリス? この部屋の有り様はなんですか。数分前に僕がきたときは、こんなに散らかってなかったはずですよね」  まるで蛇のように睨んでくるホワイトにアリスはビクビクしながらも目を合わせる。怒っている時のホワイトはその愛らしい容姿とは違って虎のようだ。  アリスとしては彼を怒らせる気はなかったのだが、彼は話を聞かない限り、これがわざとやったことなのか。偶然こうなったのか分かっていないようだ。 「こ、これはね。わざとやったわけじゃないの」 「ほう……。では、その理由を聞かせてくれますか」 「うん」  ホワイトは身近にあった椅子を二脚向かい合うように並べると、一つはアリスに座るように言い、もう一つに自分が座った。アリスはなるべくホワイトと目を合わせないように床を見つめている。彼はこれだけで、アリスがわざとやったというわけではないというのは分かっていた。しかし、何故こうなったか話を聞かない限りは分からない。 「さて、何が起きたのか詳しく聞かせてもらいましょうか」  ホワイトは膝の上で手を組むと、アリスをみつめた。その目は獲物を狙う猛獣のようだ。  
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