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ガタンゴトン
電車が揺れる。
村から出るのは久々で。
久々の外出で何をするでもなく部屋で本を読んでいれば、女の子なんだから、買い物でもしてきなよ、なんてフレディに言われた。
当然の如く護衛を沢山付けられたけれど、まあでも外出するのは悪くないかな、なんて思った。
「ねぇ、アーウィン、」
「何ですか」
いつもの無表情。
隣に座り、こちらを見るでもなくただ前を見据え答えたアーウィンはどこか冷酷で、ただ、気持ちを読み取る事はできない。
「買い物って…何をすればいいのかな?」
「…自分の好きな物を買えばいい。お金は沢山あるし、それだけです。」
う~ん、今一分からないんだよね。
買い物なんてした事もなかったしな。
「すいません、」
「あ、はい」
「向かい側、いいですか?」
急に声をかけられ見上げれば、そこには髪の長い綺麗な女性がいた。
見た所、日系人。だけどその口からは日系人とは思えない程の綺麗な発音の言葉だ。
「…、」
そして同時に甘い匂い。
思わず喉が鳴り、ハッとなった。
「……、ァ、アーウィン…、」
「………」
アーウィンも気付いたのか、ぴくりと瞼が痙攣している。
この人、凄く、美味しそうな匂いがする…。
きっとこの白い腕の中には、真っ赤な美味しそうな血が沢山流れているのだろう…。
それを思うと、ヤバい。
「あ…、あの…」
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