電車

2/10
前へ
/10ページ
次へ
ガタンゴトン 電車が揺れる。 村から出るのは久々で。 久々の外出で何をするでもなく部屋で本を読んでいれば、女の子なんだから、買い物でもしてきなよ、なんてフレディに言われた。 当然の如く護衛を沢山付けられたけれど、まあでも外出するのは悪くないかな、なんて思った。 「ねぇ、アーウィン、」 「何ですか」 いつもの無表情。 隣に座り、こちらを見るでもなくただ前を見据え答えたアーウィンはどこか冷酷で、ただ、気持ちを読み取る事はできない。 「買い物って…何をすればいいのかな?」 「…自分の好きな物を買えばいい。お金は沢山あるし、それだけです。」 う~ん、今一分からないんだよね。 買い物なんてした事もなかったしな。 「すいません、」 「あ、はい」 「向かい側、いいですか?」 急に声をかけられ見上げれば、そこには髪の長い綺麗な女性がいた。 見た所、日系人。だけどその口からは日系人とは思えない程の綺麗な発音の言葉だ。 「…、」 そして同時に甘い匂い。 思わず喉が鳴り、ハッとなった。 「……、ァ、アーウィン…、」 「………」 アーウィンも気付いたのか、ぴくりと瞼が痙攣している。 この人、凄く、美味しそうな匂いがする…。 きっとこの白い腕の中には、真っ赤な美味しそうな血が沢山流れているのだろう…。 それを思うと、ヤバい。 「あ…、あの…」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加