電車

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「…?はい」 窓の外を見ていた女の人がこっちを向いた。 必死に繕って、私は話をする。 周りに護衛が付いてるからって、安全とは限らない。自分は自分で制御しないと。 命を奪うなんて絶対にしたくない…けれど、まだまだ制御しきれないのだ。 ましてやこんな、甘い匂い…。 「あ、の、お一人で、旅行…ですか?」 何気なく尋ねてみる。 すると女の人はニコリと微笑んだ。 「ホームステイするんです。今からそこへ行く途中で。本当、一人で大丈夫か、なんて友達や叔父さんに言われたのだけど、ちょっと、一人で旅したくて。」 清々しい笑顔。 何だか羨ましい。 愛されてる。この人は私と違って、とても愛されている。そして友達も沢山。 「…羨ましいです」 「…え?」 「いえ…」 甘い匂い。 でもダメ、この人を食べてはいけない。 「そうだ、名前!私の名前は葛木亜莉子。うーんそうね、アリスって呼んで。私のあだ名なの。」 「…アリス…私は、レナ…レナ・タウンゼント。隣の人は、私の使用人であり先生のアーウィン・ノルティ。」 アリスはどうもとお辞儀をする。 アーウィンもコクリとお辞儀をし、直ぐに目線を外した。
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