電車

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いいわよね? ちょっとくらい。 味見、味見するだけ。 目を赤く染め、口を開ける。 ほんのちょっと、ちょっとだけ。 首を舐めるだけ。 長い舌を出して、彼女に近寄った。 『アリスに手を出すのは、許さないよ』 「!!?」 突如聞こえた声に、驚きのあまり、飛び退いてしまった。 いったい、何? 『アリスは美味しい。だけど、食べていいのは僕だけだよ。』 見えた顔に、悲鳴を上げそうになってとっさに口を押さえた。 なに、なに、あれ。 ニンマリと開けた口。口の中には幾本もの尖った歯が生えていて、顔はフードで見えない。 「ァ、アーウィン!アーウィン!!」 揺すり起こそうとしても、ピクリとも動かない体に恐怖が募る。 その間に、ニンマリ笑顔は移動してアリスの隣へと腰を下ろした。 さっきまではアリスの後ろにいた。でも考えて混乱する。だって、アリスの座席の後ろにこんな大きな全身フードの男の人が入れるわけない。 「あ…なたは、だれ…?」 『僕らは導く物。』 導く? シュルリ、と舌を伸ばす。 ダメ、やっぱり、美味しそう。 『許さないよ』 舌に、立てられた爪。 本気を思わせる、殺気。
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