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ニンマリ笑顔は崩れていない。けれど、何だか反省しているように見えた。
「あ、というか、次の駅ね。チェシャ猫、次で下りるわよ。」
『…分かった』
上から荷物を下ろすアリス。その荷物を全てチェシャ猫と呼ばれたそのフードの男に預け、アリスは座った。
「ごめんなさい、レナ、アーウィンさん、驚かせてしまって…」
「い…いえ…」
「……。」
アーウィンったら、チェシャ猫の事をジーッと見つめたまま目線を反らさない。
その間に、電車は駅へと着き、アリスは席を立った。
「レナ、またね。」
ヒラヒラと手を振られ、私も返す。アーウィンには丁寧にお辞儀をしてくれて、フワリと立ち上がった。
「さ、チェシャ猫、行くわよ。いい!ホームステイ先では絶対に出て来ちゃダメだからね!」
『分かってるよアリス、君が望むなら。』
「よろしい。」
ふふ、と笑いながら立ち去るアリスに、不思議な感覚を感じた。
あの子は別の世界の住人なのだ。なんとなく、そう思った。
「!!」
フワリ、アリスが出て行く瞬間、黒い目の優しそうな白ウサギが見えた。ぺこりとこちらにお辞儀をして、一緒に出て行く。
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