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生まれつき、両親というものは存在していなかった。 気がつけばたくさんの子供の中に紛れて自分がいた。いわゆる孤児というものだろう。変わらずに職務を全うする大人と、親のいない寂しさを互いに埋めあう子供。そのどちらも、好きではなかった。否、嫌悪していた。 親というものがどんなものかは知らないが、ここでへらへらと貼り付けた様な笑みを浮かべ続ける大人達を見ていると、そんなもの、必要ないとしか思えない。 それでも時は過ぎ、一年、また一年と年を重ねていった、そんなある日。 冷め切った自分とはまるで正反対の、陽だまりの様な生き物だった。 金色の髪を揺らして無邪気に微笑みかけてくる少女に、拒絶の言葉など吐けるはずがなく。今までの人間とは違う何かが、その少女にはあったのだ。 それは俺が9歳を迎えたばかりの頃のことだった。
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