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「ふん、元々はこの身も人間だったモノらしいがな。役を持って呼び出された以上、ソレをこなす以外に選択肢はない」
悪態をつきながら、広げた両腕をアンテナに街を探る。
町の中心に位置する広場。
この場所から街の人々の欲を探り、できる限り自然に、できる限り多くのソレを満たす。
それが、伝説や進行の殻を被った亡霊(サンタ)の、与えられた機能(しめい)だった。
由来やカラクリは知らない。
個性はあれども人格は薄く、抗う自由を持たぬ彼にとって、役目を果たすことこそが存在意義のほぼ全てである。
「といっても、やれることはそう多くもないけどな」
妄念や欲といった感情は、ある程度互いを吸い寄せる。
それを利用して、せいぜいバランスをとること。
それが、彼に許された仕事であった。
亡霊の原型(生前の自分)がどんな人間(モノ)だったのかは知らないが、死ぬときに何かを思い残したのかもしれない。
その結果として、今こんな仕事をすることになっている。
「まぁ―――仕事は仕事だ。グダグダいってても始まらんか」
生前の自分に何か望むものがあって、その結果として今こうしているのだとしたら。
自分(サンタ)自身にとって無駄な奉仕にも思えるこの仕事も、あながち無駄ではないのかもしれない。
そう考え、サンタは腕を下ろし広場を出ようとする。
大雑把な街の状態は把握した。
あとは足―――亡霊だからとて、足がついてないわけではない―――をつかって当日(クリスマス)まで情報を集め、準備する。
やれやれ、面倒なことだとため息をつきながら、彼の足は広場を出て、住宅街へ向かった。
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