プロローグ

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頭痛がしそうなくらいボリュームを上げて、眩暈がするくらいゲインを上げる。 細い指でコードを押さえて、汗ばんだ手でピックを握り直す。 歪む、歪む、私のギター音。 照明の関係で客席は見えない。 それでもわかる、熱気。 マイクの前に立つのはいつになっても慣れない。 ただ、演奏が始まった瞬間に頭の中が空っぽになるのが好きだった。 何も考えず、ひたすら歌って弾いて歌って弾いて。 むせかえるような熱気の小さな小さなライブハウスで、私達は月に1度ライブを行う。 女の子3人のスリーピースバンド。 別にプロになりたいわけじゃないし、卒業したらこのバンドも解散するだろう。 それでも良かった。 それだけで良かった。 自分とギターとバンドだけあれば満足だった世界にもう1人、大切な人が加わるのは少し先の話。
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