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「そうと決まったら早く行きましょう。」
颯月は小春のギターケースと鞄を奪い取ると、空いてるほうの手で彼女の手首を掴んでさっさと歩き始めた。
「えぇ!?ちょ、まっ、颯月さん!」
「安心して下さい。僕はあなたを取って食ったりしませんから」
「いやいやそういう問題じゃ…」
「それにこれから雨が降るそうですよ。野宿なんか無理でしょう」
「うっ…」
そう言われて夜空を見上げてみると、たしかにどんよりとした雲で今にも雨が降り出しそうである。
そうしていると、あっという間に颯月が住んでいるマンションに着いてしまった。
小春が住んでいたボロアパートとは違い、8階建ての綺麗なマンションである。
颯月は一旦小春から手を離すと、自分の鞄から鍵を取り出してオートロックを解除し、また彼女の手を引いてエレベーターに乗り込んだ。
6階でエレベーターは止まり、また彼は慣れた手つきで603号室の鍵を開けた。
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