◎ とある放課後のおはなし

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私はどちらかというと 要領が悪い。 さっきもそうだ。 みんなで「カラオケいこーぜ」って話してたのに、 教室にお弁当忘れてたのに気付いた。 「1日くらいへーきだろ。」 っていう女子高生にあるまじき考えで学校から徒歩20分地点のカラオケに仲間と向かっていた。 関谷さんはわりとざっくばらんな性格をしている。 思い出したきっかけは なんだったか覚えてない。 「だめだ明日祝日じゃん!発酵する!」 運が悪いことに (・・・いや普通、学生は喜ぶところだ。) 3連休だったのだ。 食べきれなくて、お弁当に残された鮭が連休明けにどんな姿になっているかなんて想像したくない! 「ごめん先行ってて!」 って言って戻った。 ・・・・・さっきの話だ。 関谷さんの回想モード終了。 それまでは良かった。 連休だと気づけた、 これは誉めるべきだ! よくやった私! 私は火曜日の私を救った! 何度でも言う。 それまでは良かったんだが。 「あっ関谷、いーとこに!」 担任に見つかって。 「プリント整理手伝ってくれる?」 なーんて言われて 「よ・・用事が・・・」 って 言ってみたはいいけど 「この間日直サボったのは誰だった?」 なんて言われたらそりゃ 断れないって話ですよ! 「ありがと―関谷!じゃ お願いね!」 どのへんがお願いやってん!? どのへんがお願いやっちゅーん!? それただの強要です先生!ちくしょうう! 関谷さんはシャイでチキンな女の子なのでとてもとても、そんなことはいえません。 心の中で全力で愚痴りました。 興奮のあまり方言丸出しですよ、関谷さん。 しかも先生!サボったんじゃないんです! ちょっと忘れてただけなんです! ・・・・関谷さん。 「ちょっと忘れてた」を世の中では「サボった」と言うのですよ。 カラオケ行きたかったうわあああん! 仕事しろ先生うわあああん! むむむ、と心の中で先生に言いたかった ・・・そう言いたかったが嵐のように来て嵐のように去って言った先生に伝えることができなかった 言葉を叫び続けた。 ああ、でも 先生が秋の空を流れる雲のようだったとしても。 関谷さんは文句を言えなかっただろう。 なんたって彼女はチキンガールなのだから。 彼女の選択に 断るというモーションはない。
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