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『ごめん ちょっとかなり
遅れますちくしょうっ』
とりあえずあいつらに
メール送っておこう。
カチカチカチと慣れた様子でメールを送信。
「あーめんどくさ いっ!」
誰もいない廊下だったので
関谷さんは叫んでみた。
もしひょっこり誰かが
顔を出したりなんかしちゃったら
関谷さんは羞恥で死にそうなくらい
悶えてたことだろう。
そんなことはなかったのだが
ガランとした廊下に向けて
叫ぶのは実に虚しいだけだったようだ。
関谷さんはフッと息を吐いて
自分の教室に向かった。
自分の人生を諦めるのは
まだ早いぞ関谷さん。
「言葉に で き な あ い―」
まさに私の心情を指す歌だったので思わず口ずさんだ。
「らぁんらんら―んらら・・・」
歌いながらガラッと横移動タイプの扉(・・・・学校の教室では主流のあの扉だ)を開けた。
「あれ、関谷じゃん。どこの尾崎●かと思った。」
教室にいたのは同じクラスの高木だった。
ちょうど真ん中の席で
プリントの山と対決中だったようだ。
「・・・・お?高木?え、何お前も
先生につかまったの?」
「俺は日直でーすー。ほら暇なら手伝え」
「手伝いにきたんでーすー」
「え まじで!」
「帰っていーなら帰るよ!」
「手伝ってください」
「よろしい!」
なんて軽口叩いて、
高木の向かいの席に座った。
先生グッジョブ!なんて
喜んでましたなんてのは
内緒内緒。嬉しすぎる!
関谷さんはこの高木くんに
絶賛片思い中なのだ。
尾崎●熱唱を聞かれた恥ずかしさを感じる前に驚きと嬉しさが先行したらしい。
恋する乙女はいたって
単純である。
嫌で嫌で仕方なかった
先生のパシりだって、
なんだか嬉しいものなのだ。
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