自分と弟

2/7
前へ
/7ページ
次へ
朝のキッチンはいつものように私と父親の二人だけ。 通勤と通学前 だけれど落ち着いた朝の静寂の中、聞こえるのは私の握るフライパンのなかで焦げるベーコンエッグと、父のめくる新聞の擦れるおとだけ。 そして父は言った。 さらっと言った。 「今日の朝飯なに?」 くらいさらっと。 「今日結婚すっから」 あまりに唐突に言われたので、私も反射的にさらっと流してしまった。 「へえ」 と。 そして、 ジューとフライパンの中で焦げていくベーコンエッグ。 それが黒い炭になったところで私はやっと言葉の意味を理解した。 「結婚っ!?」 どたんばたんがっしゃーん。 私のあまりのリアクションのでかさに父も 「うおお!ドリフか!」 といささか錯乱気味でした。 それは私が高校一年になって迎えた5月の始まりのことでした。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加