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黙ったまま、踞った市古の横に立って吸いかけの煙草を口に運んだ。
横目で市古を見ると、明らかに落ち込んでますオーラを放っている。
なるほど、と納得した。
こいつはいつもどんなに怒られても、翌日にはしっかり切り替えて仕事に挑む。
最初は単純なだけだと思っていたが、今ようやくその理由がわかった。
市古はいつも、誰にも見つからないようこうやって一人で、落ち込みたいだけ落ち込んでいたのだろう。
それを引き摺らないよう、ここで全てを終わらせて家に帰っていたのか。
遠くから聞こえる喧騒が静かに響く空間に、カラン、そんな音がした。
「……飴?」
市古が手に持つピンクのビニール紙と、横顔の頬が不自然に膨らむのを見て、思わず声が出た。
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