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《おまけ・Side 孝太朗》
「いやぁ、可愛いかったなぁ」
兄、眞生と桃花ちゃんの子供が産まれた翌日。母子の見舞いに行った帰り道、眞生の車の助手席で優花(ゆうか)と名付けられた産まれたての小さな命を思い返した。
「俺達の子供なんだから、可愛いのは当然だろ」
「うわっ。すでに親バカ丸出しっ」
「ばーか。親は皆そんなもんだよ」
しかし確かに、ふにゃふにゃの赤ちゃんは、見ているだけでも愛しくなる。親戚でもそう思うのだから、親だったら尚更なのだろう。
「あの子もそのうち『パパと結婚するー』とか言うのかね」
「……さぁな」
何気なく言ったつもりだったけど、無表情を装っていた眞生の頬が僅かに緩んだのを確かに見た。
あれ、絶対喜んでるよな。
わかりやすっ。
きっと内心喜び悶えてるに違いない眞生を見て、イタズラ心が顔を出した。
「でもすぐに彼氏とか連れてくるんだろね、イケメンの」
「……お前、馬鹿か」
「は?」
「そんなもの、認めるわけねぇだろ」
「……」
……子供の力ってすごいな。
眞生でさえ子煩悩に変身させるのか。
まだまだ先のことなのにも関わらず、不機嫌全開にハンドルを握る眞生に苦笑して窓の外に目を向けた。
――優花。
君はその小さな手で何を掴むのだろう。
願わくば君の両親のような幸せが、その両手いっぱいに訪れますように
。
おまけ Side 孝太朗
終
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