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数ヵ月後。
季節はすっかり変わり、梅雨に入っていた。
雨は嫌いだ。
ジメジメしてうっとうしい。
ただでさえ苛つくこの時期に、それを倍増させるヤツがいる。
「市古ぉー!」
「はいぃーっ」
それがこれ、市古。
「お前、書類は出す前に見直せっつってんだろ」
「う……すみません」
何なんだ。
よくもまぁこんなうっかりミスばかりできるもんだ。
「何回も言わせんな」
「はい……」
あぁ、まただ。
でっかい目に涙を溜めて俯く市古。
まだ涙を流した事はないが、それもすぐだろう。
けれど、泣けば許されるものじゃないし、俺は許すつもりもない。
わざとらしく溜め息をついてみせて、追い払うように手を振る。
「とりあえず直してこい。話はそれからだ」
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