独り狼達の遠吠え

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騎士を辞めた。 失うものが多過ぎた。 十分過ぎる理由だ。 皆よく立ち直れたなと思う。 いや、内心ではきっと泣いてるんだろう。 けれど、それでもオレには無理だったのだ。 これから頼もしい相棒に成るであろうコイツを連れて、オレは延々歩き続けていた。夜だろうが朝だろうが関係ない。疲れれば当然休むし、取り敢えず足が進む限りは歩いていた。騎士でいる間に埋もれてしまっていた『元来の自分』を探し出せるかもしれないと思ったからだ。 (お前なら何て言うかね) 辞める事を止められはしなかった。止められたとしてもきっと聞かなかっただろう。いつもの様に。 だから、もう金輪際頼らない事を誓ったつもりだった。 一人でのうのうと生きて行こうと。何も背負わずに生きようとしたはずだ。なのに、誓いというのは脆いものだ。 (揺らいでいる) 何度目か分からない葛藤の末に出て来る答えは、結局。 「分からない、か」 曖昧で自信が無く、真の無い自分。明確に形作られない自分に多少の焦燥を感じて喝を入れるが、オレとてそう強くはない。まだ諦め切れていない事が多過ぎる。 夜になって上を、空を見る。 すると最近、自分が下ばかりを見ていた事に気付く。そういやお前に背中を向けたのはいつだったか。 (星は目ぇ一杯ぎっしり詰め寄ってんのに) 自分の、このやり場のない細い感情は一体何なのか。 この葛藤は終わらない。終わっても、また新しい葛藤が果てしなく付いて回るだろう。白と黒がはっきり分かるまで一生。 けれど、世の中はその二色だけでない事を知ってしまった。だからオレは一人になった。また揺らぐ。 でも。  
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