一章

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 だから今日、放課後。彼から声をかけられた時、暁人は飛び上がりそうになった。 「井筒さん。このあと予定あります?」 「……あ?」  帰り支度を終え、自分の席を立とうとしていた暁人の机の前に、蒼は立っていた。  暁人は驚いて、一瞬ぽかんと固まる。  教室内にはまだ半数近く生徒がいたが、蒼の視線は確かに自分に向いていた。 「いい、けど」  なんの部にも所属しておらず、特に予定もなかった。今日発売されるはずの漫画雑誌をコンビニで立ち読みしていこうかと考えてはいたが、それは別に今日でなくてもいい。  断る理由もなく、暁人は二つ返事で頷いた。  夕日が教室を緋色に染めている。逆光で蒼の顔は影になっていて、表情はわからなかった。  ただ、彼が自分を見ている。いつも反らされてばかりの視線が自分を捉えている。  その事実だけが暁人の脳を揺すぶっていた。
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