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彼女はごく小さな声で、
「突然に、すみませんでした」
と言って目を伏せた。彼女は私が無意識に触っていたリングを凝視している。
どうやら少し、冷静になったようだ。
「私、タケルの幼なじみなんです。妹にしか思われてませんけど…。あなたにずっと嫉妬していました。
…せめて…せめて、あなたがタケルを愛していてくれたなら良かったのに…。あなたにはただの遊びだったんですね」
彼女はキッパリとした口調でそう言い切り、私に軽く頭を下げてきびすを返すと、待たせてる彼の方へ歩き出した。
迷子の子供みたいな重い足取りで。
ようやく彼のもとに彼女がつくと、彼もまた私に深く頭を下げた。
「俺の彼女がすいません」
まるで、そう言っているかのようだった。
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