プロローグ ~それは傷ついた仔犬~

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湯元力良(ゆもと ちから)。 我が『桜ヶ丘高校』サッカー部のエースストライカ-だ。 すらっと背が高く、整った顔立ち。おまけに性格もいい。非の打ち所なし、というのはこの人のことを言うんだろう。 よく、『天は二物を与えず』と言うけれど、彼は二物どころか三物も四物も与えられてると思う。 そんな彼は、一般人を絵に描いたような私の幼なじみでもあり、実は心ひそかに想っている人でもある。 「どうしたの?そんな暗い顔してさ」 ニコッと微笑みながら私の顔をのぞきこむ、彼。その笑顔は韓国ドラマの主人公にも負けない優しいオーラを放っている。 「え?あ…えと…」 笑顔のオーラにどぎまぎして言葉につまる私の顔を、イタズラっぽい目で見つめながら、彼は言った。 「わかった。また補習で残されてたんでしょ」 「うっ…」 「だからいつも言ってるでしょ?僕の家においでって。1年生の勉強だったら大体教えてあげられるよ?」 「うん……」 サッカー部できつい練習をこなしながらも、学年トップクラスの成績を誇る彼。 才能に溢れすぎて、何だか私には遠い存在のようにさえ思えてくる。
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