プロローグ ~それは傷ついた仔犬~

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「それから、他の人がいないときは昔みたいに『力良くん』でいいから」 俯く私の頭の上に、『力良くん』の大きな手がぽん、と乗っかる。 そして、よく小さい頃そうしてくれたように、くしゃくしゃ、と撫でてくれた。 いじめっ子に泣かされたとき、鉄棒から落っこちて泣いたとき、私が辛いときに力良くんはよくこうして撫でてくれた。 何だかあの頃に戻ったようで、ほっと安心する。 こんなとこ、あの人達が見たら後が怖いなぁ… 『あの人達』というのは『湯元君ファンクラブ』のこと。 学年を問わず人気のある彼は、入学したときからファンクラブができているんだとか。 それを知らずに1年遅れて入学し、彼とそれまで通りのように関わっていた私は4月の始めに数々の嫌がらせを受けた。靴箱に手紙、なんていかにもありがちな嫌がらせはほぼ毎日あった。 でも、それに気付いた力良くんがファンクラブのみんなに私が幼なじみであることを言ってくれたおかげで、今はずいぶんと嫌がらせは減った。
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