プロローグ ~それは傷ついた仔犬~

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私は、昔からよく『この世ならぬ者の声』を聴いてしまう。 そういう者達は、たいてい何らかの理由で「この世」に思いを残している。しかも、その理由は恨みだとか未練だとか、マイナスの感情であることがほとんど。 …故に、こういう声を聴いてしまう時は、あまりいい思いをしたことがない。 うぅ…嫌だなぁ…… 私の頭の中には、以前「見えて」しまった、交通事故で亡くなった人の霊の姿が浮かんでいた。 私、見えても何もできないよぉ…寄って来ないで… 心の中で、私に助けを求めてきた『何か』に訴えてみる。 力良くんのおばあさまの咲枝(さきえ)さんのように、迷える彼らが無事天国へ行くお手伝いができればいいのかもしれないけれど、私はただ見えて、聴こえるだけ。 正直寄って来られても、困る。 それでも、気付いてもらえた、って事だけで寄って来るんですよ。普通の人は気付いてさえくれないから…仕方ありませんね… 咲枝さんはそう言うけど、「仕方ない」で片付けられたら苦労はない。 私は、とにかく、寄ってきてほしくない!
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