町の目覚め

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緑川町に動きがみられた頃、柳瀬病院の2階にある奈美と藍が共同で使ってる子供部屋では「スースー」という可愛いい、いびきが聞こえた。 しかし、子供部屋の隅のほうで明かりがついている。 勉強机には、いつ倒れてもおかしくないほどの本が積まれ、机上には栄養補充のためのドリンクがおかれていた。 そして薄暗い中、よく見えないが机の椅子に鉢巻きをした人間が見えた。 一瞬幽霊と思ったが、幽霊ではないことを判断したのは近くに貼ってあった壁紙であった。 ≪東京都立〇〇高校特進 コース合格祈願≫ と赤い太い字で壁紙には記してあった。 ということは、柳瀬家で唯一、高校受験を迎えている人物! そう、奈美である。 しかし、家族代々、あの私立大学医学部最難関の慶應義塾大学医学部出身という学歴をもっているから、奈美にもそれなりの血が流れているだろうから早朝から、わざわざ勉強しなくても、合格できると誰でも思うはずだ。 しかし奈美の姿は何か違って見える。とても真剣な眼差しで一つ一つの課題を一生懸命こなしている姿。その一方、家族代々の学歴のせいで第一志望校に「不合格」というこの三文字に強烈な恐怖を感じているようにも感じとれた。 しかし、彼女が思ってること、感じてることは誰にもわからない。だから何故こんなに勉強をするのか意図が掴めなかった。 しかし、この意図の原因が奈美の今までの学業成績と家族代々のプレッシャー、そして奈美への虐待であったとは誰も想像していなかった・・・。
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