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今日は村の若者たちの大人になる儀式もふまえている。
日も沈んだ頃、同い年の若者が神社に集まり次第、儀式が執り行われる。
「あ、茉莉!」
「美弥子!」
「綺麗な着物だねぇ、今日のために?」
「うん。うち貧乏なのに、母さんが頑張ってくれたみたいで…」
「よかったね…」
「うん」
「あ、茉莉!平助さんいるよ!」
「え?!」
来てくれたんだ…。
うれしい…。
「茉莉!挨拶してきたら?」
「え!」
「仕事でなかなか都会から戻ってこられないんだから、もう会えるの今日しかないのよ!?」
そうだ、この村では18歳になったら村から出て働かなくてはならない。
平助さんは特に良く働く人で、都会にある本社に出世して、なかなか村に戻ってこられない。
もう、今日しか会えないかもしれない…。
「私、行ってくる」
そして、今までの私の気持ちを…
美弥子はそっと私の背中を押してくれた。
心の中でありがとうとつぶやき、あの人のところへ走りだした。
愛しのあの人…
私は今まで一日たりとも忘れたことはなかった。
今日、私はこの思いを…伝える。
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