0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの…」
「やあ、茉莉ちゃんじゃないか!そうか、君も今年で…」
「はい、18歳です!…あ、あの…」
「ん?なんだい?」
「あの、私…実は、ずっと前から、あなたのことを…」
全て言い終わる前に境内で太鼓が強く叩かれる音がした。
それは、合図だった。
その音は、儀式の開始を知らせ、同時に私を呼んでいた。
「茉莉ちゃん、早く行かなくては…遅れてしまうよ」
私は…恥ずかしげもなく抱きついた。
目からは涙がこぼれおちる。
「茉莉ちゃん…」
「私、いきたくない!」
「でも、いかなくては…ならないんだよ」
「…ずっと、好きでした」
「…うん、ありがとう」
…
そっと離れ、うつむいたまま背を向ける。
背中を押してほしい。
きっと、もう会えないから。
いきなり暖かい風が吹いたかと思ったら、何か温かいものに強く包まれた。
それが平助さんの腕の中にいるのだと気づくまでに数秒かかった。
「…平助さん?」
「待ってるから」
耳元で囁かれているせいか、少しくすぐったい。
「茉莉ちゃん、ずっと待ってるから」
「…はい」
最初のコメントを投稿しよう!