平助(真実)

3/3
前へ
/7ページ
次へ
「平助ー!」 振り返ると、幼馴染の喜兵衛が走ってきた。 奴は18になり外で修業し、戻ってきて茉莉ちゃんの着物を仕立てた。 そして俺は、奴が茉莉ちゃんに惚れていることも知っていた。 だが、もちろん彼女は生贄であり、それが叶うことはない。 だからせめてと最高の材料を使い、立派な着物を仕立て上げたのだ。 今では後を継いで店を切り盛りしている。 これから産まれる俺の子供の産着も、喜兵衛に作ってもらうつもりだ。 なのに、ただでさえ忙しいはずの喜兵衛がなぜここへ? 喜兵衛は走って来たからか顔色があまり良くなかった。 「…大丈夫か?」 喜兵衛は肩で息をしながら、辛そうに声を出した。 「……お前の嫁さんの美弥子ちゃん。さっき産気づいたって……。」 … …この時、俺の娘の名前が決まった。 『茉莉』だ…。 .
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加