冷たい恋人

2/8
前へ
/8ページ
次へ
「テレビ捨てたから」 仕事から帰ってきてリビングに向かうと、キッチンから冷酷な声が聞こえてきた。 暖房も効いていない寒い空間が更に凍りつくように放たれた言葉。 今夜は俺が観たい番組があるというのに。 録画予約だってしておいた番組があるのに。 一体ナニが気に入らないんだろう? 近頃の俺はテレビばかり観ていて、恋人をほおって置きすぎただろうか… 頑固な恋人に俺は逆らえない。 逆らったらどうなることか。 「別れる。」とか「出て行く。」と言ってくれるなら、まだいい。 予兆もなしにいきなり俺の目の前から消えてしまうかもしれない。 そうなったら、俺は生きる屍だ。 だって、長く隣にいる恋人の存在はもう俺にとっては空気みたいなものなのだから。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加