冷たい恋人

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********* 席に着いた俺の向かい側に、恋人が座った。 テレビがついていないリビングは無言空間で、その静寂に俺は耐えられない。 「…いただきます」 義務的に箸を動かして食べる。 サラダにコーンスープ、ロールパン、ハンバーグ。 グラスに冷たい水が注がれる。 こいつの手料理ってこんなにおいしかったっけ… いつも、テレビを観ながら食べていたから味わっていなかったな… 目の前の恋人も俺と目を合わせずに黙々と食べている。 ぼんやりと見ていたら、目が合った。 恋人がフッと笑った。 別に笑う時でもないのに。 そういえば…コイツは悲しいときも涙を堪えて笑うヤツだった… 忘れかけてた恋人の習性を思い出したら、自分の愚かさに深く堕ちていった。 目の前の恋人は傷ついている。
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