始まりの章

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ジリリリリリ…ジリリ… 「ん~…あと5分…」 ジリリリ……ジリリリリリ…ジリリリ… 「ああもうっ!うるさい!」 今日もまた、いつものように目覚まし時計と格闘をしながら朝を迎える。 格闘…と言ったが、勝利したことは一度もない。 「おはよー…」 「おはよう」 階段を下りて下に行くとお母さん達はもうとっくに朝食が済んだ後らしく、それぞれ新聞を読んだり歯を磨いたりしていた。 「早く食べちゃってよー」 台所にいるお母さんの催促に、私は急いで朝食を口の中に詰め込む。 詰め込めるだけ詰め込んで、さっさと着替えを済ませる。 「行ってきまーす」 ものの10分も経たない内に支度を終えた私は、風のように家から飛び出していった。 途中で右腕につけた白いベルトの腕時計をちらりと見ると時刻は7時25分、電車の発車時間は7時30分、いつも駅に着くまでにかかる時間を考えても到底間に合いそうにない。 自転車で行っていれば間に合っていただろうが、生憎今は修理に出していて乗ることが出来なかった。 (ヤバイ!間に合わない…!) 走るスピードを一気に上げて、周りの遅い自転車を次々に追い抜かしていく。
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