9人が本棚に入れています
本棚に追加
目標もあてもなく暗闇を走っていた香乃斗は、あまりに変わらない風景――すなわち真っ暗闇の周囲に涙目になってきた。
「勢いで飛び出したけど誰に助けを求めたらいいんだろう……っていうか、本当にここはどこ? 人って、いるの?」
あ、月読さんに聞けば良かったんじゃ――と、今更なことを思い、振り返る。
けれど、そこもすでに真っ暗な闇しかなく、あの銀色の淡い光はかけらも見いだせなかった。
それどころかどちらの方角から来たのかさえすでに定かではない。
完全に迷子になっていた。
「うう~、ただでさえ猫神様籠っちゃってわけわかんない状況で、しかも真っ暗で何も見えないし誰もいないってのに、その上俺ってば迷子になってるし……」
ますますパニックに陥った香乃斗の視界が、涙でぐにゃりと歪む。
「うう……もう、どこでもいいよ。どこか人のいるとこ、だったら……っ……」
それでも香乃斗は負けじと、何かに惹かれるようにまた、暗闇の中を走り出した。
目頭に浮かぶ涙を拭いとり、当てもなく、けれど決して止まることなく走り続けた。
するとまた、景色がぐにゃり、と歪んだ。
涙のせいか、と思い、ぬぐおうかと腕を持ち上げた途端だった。
目の前に突然、障害物が現れる。
「え? て、うわっ!」
視界を自分の手で覆っていたせいで対応できなかった香乃斗は、思い切りその障害物にぶつかり、尻餅をついた。
最初のコメントを投稿しよう!