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「俺、猫神様みてたらどうしても我慢できなくて、思いっきりぎゅーってしちゃったんです。そしたら、突然猫神様怒って、天岩戸っていうでっかい岩の中にこもっちゃって……」
「天岩戸ぉ?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまったアレクだったが、深呼吸を一つすると努めて冷静な声で香乃斗に問うた。
「ね、あの猫一体どうしたわけ?天岩戸って天照大神じゃあるまいし……」
「だから、天照大猫神様ですよ」
「……!」
――し、知らない間に余計な物に進化している!!!
あまりの衝撃に再び言葉を失ったアレクに気づきもせず、香乃斗は続けた。
「猫神様、神話と同じく太陽の神様だったらしくて、その岩戸を召喚してすぐに籠ったら、突然真っ暗になっちゃったんですよ。それで、俺、どうしようって……」
――しかもまた、余計な能力まで付加されている!!?
思わずめまいがしたアレクだったがぐっとこらえると、香乃斗に向き直った。
「とにかく、そのへたれ猫の所為でこんな状況が出来たということでいいんだよね?」
「だから、へたれ猫じゃなくて猫神様ですよ」
どうして「へたれ」なのか理由を当然知らない香乃斗は眉根をしかめた。
仮にも神様に「へたれ」なんて失礼だろう、と思うけれど、アレクの口ぶりだとなんだか彼はあの神様とあまりいい思い出がない感じだ。
(……一体、過去に何があったんだろう?)
ふとした疑問と興味が小さな滴となって沁み渡る。
とても聞いてみたい衝動に駆られた。
けれど、今は現状を何とかするのが先だ。
グッと我慢して香乃斗は告げた。
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