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「でもよかったです。猫神様を知ってる人に運よく出会えて」
見知らぬ場所で、こんなにもすぐに彼女を知る人間に出会えたのは、もはや天恵だ。
自らの幸運が引きよせたのか、それとも運命という名で神が気まぐれを引き起こしたのか、この機会を逃してはならないと、香乃斗は勢いよく身体をアレクへと近づけた。
「アレクさんお願いします! 一緒に猫神様を出すのを手伝ってください!」
「え……できれば関わりたくな――」
関わりたくない、と言おうとしたアレクだったが、香乃斗がきらきらした眼差しで見つめてくるものだからそれ以上告げることができずに、がっくりと肩を落とした。
(あの猫と関わると、ろくなことがないんだけどな……)
思いながらも、かりかりとこめかみを掻いて言った。
「……じゃあ、こういう時にすごく頼りになる人がいるから、その人に相談しにいってみようか」
「頼りになる?」
「凄く頭がいいんだよ。IQ180だって」
「すごっ」
アレクの告げた数値に、香乃斗は思わず声を上げた。
( IQ180ってことは、漫画の金●一少年みたいな天才!? 探偵とかなんか!? わー、でも実際にいるんだ、そういうIQが高い人って。すっごく楽しみだなあ!)
どんな人なんだろう!?
と、想像を膨らませて、けれどふと、香乃斗は不安に襲われた。
(でも、頭がいい人と何とかは紙一重みたいな言葉があったような気がするし、金田●少年も結構変なところが……いや、大丈夫、だよね?うん。現実と漫画をごっちゃに考えちゃいけないよな)
ふとわき上がった不安を必死に自分に言い聞かせてごまかす香乃斗。
アレクはそんな彼には気づいていない様子で立ち上がると、軽く屈伸するように膝を伸ばした。
「まあ、他の心当たりは、一人は絶賛行方不明中で、いたとしても無駄に騒ぐだけで役に立たないだろうし、もう一人の方も頭廻るんだけどなにせ東海岸にいるから、相談に行くには遠すぎるからね」
ぶつぶつとぼやくように言ってから今度は腰を伸ばすと、アレクは香乃斗に手を差し出した。
「とりあえず、香乃斗君、でいいかな。一緒においで」
「はい!」
香乃斗は頷くと、力強くその手を握り返した。
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