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それはある日ある時、神様が起こした気まぐれの生んだ物語――
💠 💠 💠
あるうららかな秋の午後、最近非日常的なことにばかり囲まれていた香乃斗は、息抜き、とばかりに散歩に出ていた。
むき出しの土の歩道には落葉した銀杏の黄色い葉で覆われ、足の下で乾いた音を立てる。
そんな感覚を楽しみながら公園を歩いていると、ふと、視界の隅に不思議な物を見つけた。
風を受けてなびく草の合間から栗色のとがった物がちらちらと覗いていた。
(なんだろ……?)
興味を引かれた香乃斗は、足音を殺してそっと近づいてみた。
するとそこには、“ちんまり”としたものがいた。
猫――なのだろう。三角の耳があり、耳と同じ栗色のしっぽがあるのだから。
けれど人のように髪が生えてもいるし、何より袖の広がった着物のような服まで着ていて、それが猫だ、と言い切るにはなかなか難しいものがあった。
なんなのか判断に迷いながらその“ちんまり”としたものを見下ろす香乃斗に対し、その“ちんまり”した猫らしきものの機嫌はいいらしかった。
風にあわせて気持ちよさそうにしっぽを揺らしている。
やっぱり、猫、なのだろうか。
「……なんか用か? 人間」
するとその猫らしきものがしゃべり、くるりと顔をこちらを向けた。
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