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「まあ、立ち話も何だし、こっちのソファででも話をしよう」
ジェイのそれに、香乃斗とアレクは革のソファのある応接スペースに移動した。
「あの……ちょっといいにくい話なんですけど……」
そこで、英語が苦手な香乃斗の代わりに、そう言って話を切り出したのは、アレクだった。
「ジェイさん、あの例のやつのこと、覚えてる?」
「例のやつ?」
「例の、口が悪くて珍妙で性格も極悪なへたれ猫ですよ」
アレクの言葉に、ジェイはむっと顔をしかめた。
脳裏に苦い数々の思い出が蘇ったからだ。
「……できれば記憶を全てDeleteして、あの時の記録も全てなかったことにしたいが残念ながら――覚えてる」
「ですよね」
一番の被害者のジェイの苦々しい言葉に、どう考えても二番目の犠牲者だったアレクはため息をついた。
「言いにくいんですけど、この突然真っ暗になった現象あるじゃないですか。あれ、例のやつのせいらしいんです」
「な……」
アレクの告げた事実に、ジェイは絶句した。
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