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「うわっ!? しゃべった!?」
香乃斗は驚いて声を上げた。
(猫が? 俺の聞き間違いじゃないよね?)
思う香乃斗を尻目に、その“ちんまり”としたものは不機嫌そうにしっぽを振って言った。
「用がないならとっとといね」
そして何ともふてぶてしい口調でそれだけ言うと、また顔を元の方向に戻してしまう。
けれど声が高く可愛らしいものだったので、香乃斗は不思議と不快感は感じなかった。
むしろその不思議な生き物にさらに興味が湧く。
「用ってのは特にないんだけど……君は――――何?」
(う、我ながら超抽象的な問いかけ……)
言いながら香乃斗は頬を掻いた。
何せ動物なのか何なのかさっぱりわからなかったのでなんと聞いていいのかわからなかったのだ。
もう少しいい表現ないかな、と訂正しようと香乃斗が口を開いた時だった。
その“ちんまり”とした生き物が先に口を開いた。
「天照大猫神にゃ」
「天照大猫神?」
「そうにゃ」
「猫の神様かあ……」
(て、ことはやっぱり猫であることは間違いないわけね)
思いながら改めて香乃斗は目の前の“ちんまり”としたものを見下ろした。
「わかったらとっとといね。日向ぼっこの邪魔をすなっ」
そんな香乃斗をあくまで邪険に扱う天照大猫神だが、草むらに埋まるそのちんまりとした姿に、ふんわりとしたフォルムに、むしろ彼の目は釘付けになっていた。
立ち去るどころか、じり、と距離を詰めてしまう。
この間数秒。
彼は彼なりに“欲求”と戦った。
一応主張すると、とってもとっても頑張ってったたかったのだ。
けれどどうしても――――勝てなかった。
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