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「う、えっ……? ちょっ、何!? 何も、見えない……!?」
夜?
いや、それにしては明らかにおかしい。異常だ。
(……どうしよう。一体、何が起きたの?まさか、いや、もしかしなくても……百パーセント俺の所為だったりする!?)
「嘘……何も、見えないし……」
香乃斗は慌てて周囲を見回したが、あまりに闇が深すぎて何も見えない。
明かりになる物はないか――
そう思った時だった。
ぽうっと淡い光がすぐ傍らに現れた。
「――ああっまた姉上がこもってしまった」
「て、うわっ! 光がしゃべった」
けれどその光がそんな言葉を発するものだから、思わず香乃斗は飛び退いた。
「光って失礼な。私のことをなんだと思ってるんですか」
そんな香乃斗に、銀色をしたその光は憮然としたような声を上げる。
そう言われ、ようやく目が慣れてきたのでよくよく見てみると、それはただの明かりではなく、銀色の光をまとった――『何か』だった。
いや、別に描写をサボったわけではない。
ただ、どう表現していいのか香乃斗にもわからなかったのだ。
形は人に近い。
だが、少し紫を帯びた銀色のつややかな髪の間から、少し深い紫色の耳がぴょこぴょこっと生えており、等身も低く香乃斗の腰くらいしか身長がない。
(天照大猫神の知り合いかな……姉上とか言ってたし、弟とか?)
思いを巡らせながらまじまじと新しく現れた銀色の光の主を眺めていると、当の本人ががばっと顔を上げた。
恨めしそうな目でこちらを見上げてくる。
「あなたなんてことしてくださったんですかぁっ」
「え? え? っていうか、君は何?」
「私は三貴子の二番目、月読猫命です――て、そんなことはいいんですよ!」
月読はその穏やかそうな外見に似合わず苛立った口調で続けた。
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