ある夜の出来事。【齢十二】

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現在に至る。 …別に遊びたい訳ではない。 ただなんとなく、徳川であれば本当に毎日待っている気がする。 ただ昼間は人に会う危険が高いため無暗に出歩けない。 …別に待たせているのではないか、とかそういうことでもない。 たまたま、暇だったから。 たまたま、時間があったから。 いつも出歩くこの時間についでだからと思っただけ。 しかしよくよく考えれば大人も寝静まるこの真夜中に子供が起きていること自体が疑問だった。 …自分は別として。 だから別に空き部屋に来ただけであって徳川がいるだろうなんて微塵も思っていないんだ。 …そう自分に言い聞かせて、襖に手をかけた。 そっと開けると、蝋燭の火も無く月明かりが差し込んだだけ。暗くてよく見えないが… 「い…っ!?」 それに照らされて、部屋の隅でうずくまる家康を見つけた。 「家康!きさまどうし…」 駆け寄り、いざ落ち着いてみると、すぅすぅと寝息が聞こえてくる。
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