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何故か、言葉が出なかった。
3年とは、これ程にも長いのかと、改めて感じた。
しかし、家康が懐かしさに心に少し暖かみが増すのを感じるのと反対に、
三成は『何も感じていなかった』。
それは言葉通り。別に記憶が無くなった訳では無い。ただ、目の前の男に興味がないだけだ。
顔にはもう、あどけない子供っぽさは無く、淡麗な大人のそれに成長していた。
それだけでなく、心にも、少なからずあった『子供らしい部分』は無くなってしまっていた。
それは、それだけの壮絶な日々を物語っている事にも同意だった。
裏付けるように、この2年程比較的安暖と暮らして来た家康は、未だ幼さが残っている。
「…三成。久しぶりだな。元気…だったか?あれからお前…」
ここが戦場だと言うことも忘れ、笑みを溢してしまう程、家康は未だ大人になれてはいなかった。
刹那。
影が延びた。目の前を流れる黒い線。
「三…」
三成は何かを引き抜いた格好をしている。
そして、それが一閃された刀だと気付くのに暫くかかった。
「黙れ…もう、餓鬼の戯謔は終いだ。」
左手に持つ黒い鞘に同じ色を叩き入れる様に収め、冷たく言い放つ。
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